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少しの偶然、確かな喜び

2010.08.02

多分8年か9年前の出来事。

なんの用事かは思い出せないのだけれど、僕は町田にいた。
小田急線からJRに乗り換えるためにペデストリアンデッキを
何を思うわけでもなくただ、淡々と歩いていた。

僕はひとりで歩いている時は、
だいたいなにかしらを頭の中で考えていて、
いつもその考えに集中し過ぎてしまい、
視覚も聴覚もおざなりになる。

知り合いの人とすれ違っても、
誰かに声をかけられても、
十中八九気づくことはない。

でもその日はなぜかヴァイオリンの音色が僕の耳を捉えた。

どこかでだれかがヴァイオリンを弾いている。
周囲を見渡すと、10mほど前方に
路上ライブをやっているヴァイオリニストを確認することができた。

多くの人たちが足早にその場所を通り過ぎていたけれど、
何人かはしばらくの間足をとめたりしていて、
常時15人くらいの人だかりができていた。

ちょっと迷ってから、僕はその人だかりの輪に加わった。

演奏の内容までは覚えていないけれど、
そのヴァイオリニストから伝わってくる、
楽しい雰囲気を感じる事ができた。

僕が聴き始めてから15分ほどで演奏は終わり、
最後に片言の日本語で ―彼はポーランド人だった―
目の前に置いてあるCDの説明を始めた。

僕はとくに音楽的素養もないので、
その演奏が音楽的に優れているかどうかは分からなかったのだけれど、
ここでこうして会ったのも何かの縁だしなと思って、
楽しい時間をもらったお礼に、彼のCDを2枚購入した。

別れ際に笑顔で握手をして、
また僕は脇目も振らずJRの駅をめざして歩き始めた。

ここまでは特に珍しくもなんともない、よくある風景だ。
僕自身も、1年に何度かそのCDを聴くけれど、
そういばそんなこともあったなと思い出すくらいの出来事だった。

そして数ヶ月前。

とある異業種交流会で、不意にそのヴァイオリニストの名前を耳にした。

記憶が一気に過去にさかのぼり、ありありと当時の風景が蘇ってきた。
僕はなんだかうれしくなって、
ヴァイオリニストの名を紹介していた方に声をかけた。

その方はそのヴァイオリニストの後援をし「友の会」を
運営しているということで、
12月に行われるコンサートを紹介するために交流会に参加されていた。

僕はヴァイオリニストとの一時の出会いを語り、
なつかしいですと話をした。

その方も、そんな偶然があったことに、喜んでくれているみたいだった。

そんなわけで、僕は12月に行われるそのコンサートに行く。
そこで彼のヴァイオリンを聴いて、
僕の心にどんな思いがわき上がってくるのか、
今はまだ想像もつかない。

人に自慢できるほど不思議な体験ではないし、
本当にささやかな出来事だけれど、
こんな少しの偶然が、人生に確かな喜びを与えてくれるのは、
間違いのないことだと思う。

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