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大学の建築学科に入学してすぐに思った事は
「もしかすると間違ったところに来てしまったのかもしれない」だった。

高校3年の時は大学受験に失敗した。
模試によっては偏差値28という驚くべき数字も経験していたから、
失敗するべくして失敗したと言って良い。

浪人が決まってからは、
東京都立大学の建築学科だけに照準を合わせて勉強をする事に決めた。
当時の僕の学力からすると高望みではあったけれど、
国公立大学の中では1番受験科目数が少なかったから、
1年間という限られた時間の中で結果を出すためには好都合だった。
年間50万円以下という安い授業料も魅力的だった。

最初に方針を立ててしまえば、後はそれに沿って努力するだけである。
1年間の勉強の成果は、無事合格に結びついてくれた。

ただ、大学生活が始まって最初の建築学科のオリエンテーションで、
同期生たちが持っている建築の知識にびっくりしてしまう。
ほとんどの人が好きな建築家や好きな建築物について話をしている。
なぜ建築学科を選んだのかと熱く語っている人もいた。

当時の僕の建築に関する知識は、
「まったく知らない」と「ほとんど知らない」の中間くらいのもので、
そんな同期生の会話についてくことなど無理な話だった。

そもそも、建築家というのはどういった職業なのかということさえ、
漠然としたイメージしか持っていなかった。
「建築家になりたい」から建築学科を受験した訳ではなく、
なんとなく建築は面白そうだというくらいの気持ちで受験したのだから、
あたりまえの話かもしれないけれど。

そこで冒頭の言葉になる。
その時は、本当にどうしようと思ったことを今でも覚えている。

ただ、入ってしまったものはしょうがないし、
いまさら嘆いたって、現実は変わらない。

気持ちを切り替えて、
とにかく最初の1年間は、建築を見て回ることに費やすと決めた。
暇を見つけては街に出て、
時には(褒められたことではないけれど)授業をさぼってでも、
優れているとされている建築を見にいった。

知識うんぬんよりも、まずは空間そのものを実体験する方が、
建築を学ぶには良いだろうという思いもあった。

そんな1年間のおかげかどうかは分からないけれど、
2年生になり設計の課題が本格的に始まるころには、
建築の設計という仕事は自分の性に合っていると思い始めた。

つづく

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