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この作家の新作がでたら、必ず買って読む。
この歌手の新曲がでたら、必ず買って聴く。
というのは良く聞くし、よくあることだと思う。
僕も新作がでたら必ず買う作家さんが何人かいる。

それでは、この芸術家が展覧会を開いたら必ず観に行く。
はどうだろう?

みなさんは追いかけている芸術家はいますか?
僕はいます。

昨日まで代官山アートフロントギャラリーで行われていた、
「中岡 真珠美 展 -錯誤:Parapraxis」
残念ながらオープニングレセプションには行けなかったけれど、
なんとか先週の土曜日に行くことができました。

この中岡さんの作品を僕はかれこれ7年間、見続けています。
昨今、毎年この時期に代官山で行われる中岡さんの展覧会は、
僕にとっては一年のうちでもかなり、
かなり楽しみにしているイベントなのです。

現代の作家さんの作品を追いかけていて楽しいのは、
展覧会ごとにその作家さんの作風に変化が見られること。

あぁ、今回はこうきたか、とか。
なるほど、今こういうことにチャレンジしているんだな、とか。
会ってお話をしなくても、
作品を通じて、そういった「会話」を楽しむことができる。
ほとんど自己満足で一方通行な「会話」ではあるのだけれど、
人生を確実に目盛り一つ分、豊かにしてくれる「会話」です。

もちろん、実際にお会いして会話をするとより、楽しい。

中岡さんの作品は(あくまで僕の個人的な見解として)、
目の前にある風景を見方を変えて、
再構築して2次元に落とし込んでいく、不思議な風景画です。

(繰り返しますが、あくまで僕の個人的な見解として)
2次元の「絵」として現れるまで、風景を構成する事物は、
あるものは色を失い、あるものは新しい色を獲得します。
存在感が消えて、異なる意味を与えられるもの。
あるいは存在感が強くなりすぎて、そもそもの意味を失うもの。
中岡さんの目には世の中はどのように見えているのか、
いつも不思議に思います。

僕が中岡作品に初めて出会った7年前は、
淡く、透明感があり、綺麗な色で風景は彩られていました。
取り上げられるモチーフも「日常的だけど綺麗なもの」が多かったように感じます。

それが、2年前にはコンクリートの法面のように土木的なものや、
波間に打ち捨てられた魚網の浮きといった、
一見すると「綺麗」からはかけ離れたものが、モチーフに現れます。

去年は原爆ドームなど、より人工的な、建築物的なものが現れ、
それにともなって、今までは見ることのできなかった色彩、
たとえば灰色やくすんだ色が使われるようになりました。

そして今年。
年々、変化や挑戦が見て取れるなかで、
どんなものが飛び出してくるのだろうとわくわくしながら、
会場へ向かいました。

さて、普通であればこの流れで今年の作品について言及するところですが、
今のところ、僕の頭の中でも整理しきれていないので、
ここで文書にするのは控えます。

ただこれだけは確かなことは、
「そこには楽しい驚きが待っていた」ということと、
「来年がより楽しみになった」ということ。

しばらくは今回の展覧会で見ることのできた作品を
頭の中で反芻しながら、楽しむことができそうです。

このように自分の中で、
お気に入りの現代芸術家がいるということは、
お気に入りの作家がいるのと同じように、
わくわくして、楽しいものなのです。

みなさんもそんな現在進行形のアートを探してみてはいかがでしょうか。

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