目の前の桜並木、遠くに見える山、集めてきた本やアンティーク小物など愛おしい物。
そして、生活のひとつひとつの場面。
その全てを木のフレームに収めて飾り、愛でながら日々暮らすことを意図した住宅です。
空間を移動すると、シーンが変化し、フレーム越しに眺める側から眺められる側に変化していきます。
それぞれのシーンを撮影し、編集し、ひとつのストーリーとして具現させる一編の映画のような考え方で設計をしました。
お客様は「自分たちが求めているもの」がとてもはっきりしており、それを言葉や文章にすることに、非常に長けていらっしゃいました。
家づくりを進めていくなかで、積み重ねられた会話。
その文脈のなかから、適切なデザインやアイディアをどうやって引っ張り出していくか。
このデザインは好きに違いない。
このアイテムはきっと好みだろう。
そうしたことを考えて、打ち合わせごとに答え合わせをしていくような家づくりでした。
それはちょっとしたゲームのような感覚であったなと思っています。
お客様からいただいたヒントをもとに、ピンポイントの答えをさがしていくゲーム。
家づくりの過程もしっかりと楽しんでいただけたのではないかと思っています。
アンティークの小物や本と、隣の部屋の景色や目の前の桜並木、空などが等しく木のフレームの中に飾られている不思議さ。どこにいても自分の好きなものに囲まれているという体験を日々感じられる幸せ。
そして、桜の花を宙に浮いて真横からここまで間近に見るという非日常。
それらがいつのまにか日常になるという体験ができる家です。