区画の広い、閑静な住宅街を歩いていく。分譲されてから今まで、長い年月の間、変わることがなかった景色も、少しずつ新陳代謝が始まっている。大きかった敷地をふたつに分けて建てられた、まだ新しい住宅がちらほらと目に付いた。
だから最初に敷地に案内された時は、やはり多少驚いた。
ここが敷地です。と通された場所は、広い区画のままの敷地でもなく、ふたつに分けられた分譲地でもなく、敷地の一角。母屋の駐車スペースだった。
車が一台とまれば、あとは人が歩く分の幅しか残らない、細い敷地。
だけどそこに、多くの友人が集まることができる広い空間を求められた。こんなふうに、一見、難題のように思えることを予想以上の結果で答えるのが建築家の真骨頂。
できあがった空間には、多くのご友人が招かれている。人が集っても、それを無理なく許容できる、懐の広い家になった。